患者の特徴
情緒不安定性人格障害の患者さんの大きな特徴は、人格が不安定であることです。そして不安定な窮地にいつも立たされているため、理由もないのにイライラしてしまったり、憂鬱な気分になったりしてしまうことが多く、さらに症状が悪化してしまうと、統合失調症に酷似した症状が現れることもあります。
また、この病の患者さんの中には、前述のように人格に安定を欠いているために、対人関係をうまくコントロール出来ないという状態に悩まされることもあります。つまり、同じ相手なのに、ある時までは普通に親しみを持って接していたのに、突然にそれが豹変してしまって、いきなり攻撃的な態度を取ってしまったり、またさらに豹変して、今度は温かい態度で接するようになったりと、とにもかくにも不安定さがつきまとってしまうのです。
これに伴いまた、あらかじめ計画を立てる能力に究めて乏しいという症例の患者さんもいます。
また、強い怒りが突発し、しばしば暴力行為・自虐的行為に至るケースも少なくありません。そしてこうした衝動行為は、他人に非難されたり、邪魔されたりすると余計にその酷さを増していくようです。
衝動性、情緒不安定性が前景にある情緒不安定性人格障害と、自己像自我同一性が不明瞭で空虚感がある境界型人格障害がありますが、両者とも衝動性と自己統制の欠如という特性が共通しています。
これが冒頭に述べた「境界性人格障害」という病とダブる部分というものです。
特に この疾患にかかったの方の多くが、愛する人や大事な人に見捨てられるという不安を絶えず抱えています。 人間は誰でも多かれ、少なかれ、愛する人や大事な人に見捨てられるという不安を抱いていると思われますがこの症状の方の場合は、見捨てられ不安の感情が、非常に強く、周囲の人には、理解できないほどのレベルに達しているのです。
なぜそのような疾患にかかるのか?
原因としては様々な説が挙げられています。中でも最も多く指摘されているのは、「親子関係のゆがみ」が原因であるという説。これは精神医学分野において「分離不安」と呼ばれています。
子どもは、「自立」と「依存」との葛藤の中で成長します。つまり、人間というものは乳幼児の頃は食事から排便までを親の世話になる「依存」の時期を過ごし、独り立ちできるようになれば、親離れして「自立」して生きていくわけです。このバランスが何とも難しいのですが…。しかしそこに共通していることは、親の愛情に支えられた「安心感」が不可欠であるという点なのです。ところが、何らかの理由で親に愛情を注がれずに、その「安心感」が得られないと、「見捨てられる不安」が生じて自立ができず、思春期以降に、このボーダーライン人格障害を発症してしまうという考え方があります。
その原因となる時期は2歳前後とする説があります。2歳になると人間は親から「分離」、つまりは自分と両親が違うものだと気づくと言われているのですが、この時期に両親がいなかったり、情緒不安定だとすると、子どもの心に不安が起きてしまい、親からうまく「分離」できなくなってしまい、それが他人との距離の取り方が分からないという事態を引き起こすのです。
それに加えて、親の過度の期待や理想の押しつけが発症の原因とする考え方もありまして、最近では幼児虐待との関係も注目されています。
つまりはこういった様々な込み入った事情で、人との距離の取り方が分からないまま、成長した子どもはボーダーライン的な人間になってしまいがちであるということになります。