こういった状態を社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)と言います。これは性格がどうこう言う問題ではなく、一種の心の病として最近は捉えられてきています。そしてこれは決して珍しい病気ではありません。現にアメリカでは7〜8人に1人が罹患しているとも言われますし、我が国に於いても推定で300万人の方が罹患していると言われています。
ですから、こういった症状に悩んでいる場合は、一人で悩まずに精神・神経科を受診するのが良いかと思います。前述のようにこれだけ多くの患者さんが罹患している病ですから、それを恥ずかしがる必要などありませんし、病院・医院に行けば医師が医学的見地から病気なのかそうではないのかは判断してくれます。それで病気ならば治療をすれば良いだけの話なのですから。
でもやはり精神科・神経科に抵抗を感じる方はこちらをご覧下さい。
「社会不安障害による症状」
社会不安障害という病が引き起こす恐怖や不安によって、以下のような症状があらわれると言われています。
- 顔が赤くなる
- 頭の中が真っ白になる
- めまい・動悸・手足の震え
- 声が出なくなる・声が震える
- 吐き気・胃部不快感
また、この他にもパニック障害の患者さんに起こる「パニック発作」と酷似した症状が発現するとも言われています。
「社会不安障害の発症の原因」
社会不安障害の発症原因ですが、詳しくはまだ解明されていません。しかし、有力な説としては「セロトニンやドーパミンといった脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、それが過剰になったり不足したりすることで、神経が過敏に反応してしまう」というものがあります。
社会不安障害の治療
社会不安障害の治療法としては大きくわけて2種類あります。それは『薬物療法』と『心理療法』です。
しかし、ここ数年で急激に患者数の増えた精神科・神経科ですから、医師もスタッフも時間がありません。個人のクリニックや患者が殺到する病院ならば尚更だと思います。ですから実際は前者の『薬物療法』を執るケースが多いかと思いますので、ここでは『薬物療法』について解説してみます。
社会不安障害に主に用いられる薬剤はSSRIと呼ばれる新タイプの抗うつ剤とベンゾジアゼピン系という系統の抗不安薬です。
我が国に於いて現在、社会不安障害治療薬として認可を受けている薬はルボックス・デプロメール、そしてパキシルです。これらの薬は前述しましたSSRIと呼ばれる新タイプの抗うつ剤で、セロトニンといった脳内の神経伝達物質のバランスが崩れた状態を正常な状態に保つという作用があります。まずはこれらがファーストチョイスとして用いられるケースが多いかと思います。詳しくはリンクを辿って頂ければ詳細な解説ページがありますので、そこでチェックして頂きたいと思いますが、SSRIは副作用の少ない比較的安全なお薬です。但し、効果が出るまでは2週間前後かかる上に、飲み始めは吐き気などの副作用の発現が報告されている薬ですから、気長に服用する必要もありますし「揺り戻し」を防ぐ目的で、症状が改善してからもしばらくは服用を続ける必要があります。
その他に不安発作時にそれを鎮める目的でベンゾジアゼピン系の抗不安薬が頓服として処方されるケースがあるかも知れません。これには即効性のあるデパス、レキソタン、セルシン、ワイパックスなどがあります。
社会不安障害患者の方への思いやり
社会不安障害を患っている患者さんに対しては過度の励ましなどは厳禁です。頑張りすぎた結果、発病してしまったケースもありますので、 かえってストレスになり、病状悪化へと繋がります。
また患者さんは、「何で自分ばかりこんな目に遭っているのか」などといった感じの孤独感や自己嫌悪に満ちてしまっていることが多いので、周囲の方は患者の言動に一喜一憂せずに、患者さんに共感を表すような言動を持ってサポートすることが大切です。
そして、前述しましたように社会不安障害は『性格』とか『慣れ』という問題ではありませんので「訓練だ」「リハビリだ」などと称して、「人混みの中を歩いて来い」などと患者さんが嫌がる言動を強いることは考え物です。『強要』ではなく『受容』の姿勢で接してあげることが大切です。
また、社会不安障害を罹患してしまった方々の多くは「脳が疲れた状態」にさらされています。人間、疲れた時には休養を取ることが一番であることは言うまでもないでしょう。実際、脳の疲れが取れてくれば「自然治癒力」が起動し、病から抜け出せるケースもあるのです。ですから、患者さんには繰り返しですが「叱咤激励」ではなく「休養」を勧めるべきでしょう。